泌尿器科 UROLOGY
概要
地域の基幹病院として、泌尿器科領域全般の診断と治療を行っています。泌尿器科専門医2名を含む医師3名の診療体制で、外来診療、救急診療、手術、薬物療法および入院診療に対応しています。
広島大学病院泌尿器科と緊密に連携し、専門的な検査や高度な治療が必要な症例について診療方針を検討するとともに、必要に応じて相互に患者さんを紹介しています。地域の医療機関とも連携し、備北地域で継続して泌尿器科診療を受けられる体制の維持に努めています。
診療内容・対象疾患
(1)泌尿器がん
手術、放射線治療、薬物療法などの選択肢から、がんの進行度、年齢、全身状態、患者さんの希望やQOL(生活の質)を総合的に検討し、十分な説明と同意のもとで治療方針を決定します。薬物療法は、疾患や治療内容に応じて外来化学療法室と連携して行い、放射線治療および緩和治療についても院内の専門部門と連携しています。
前立腺がんの治療
前立腺に限局したがんでは、根治を目的として手術療法または放射線療法を選択します。がんの悪性度や進行度、PSA値、年齢、全身状態、治療後の生活への影響などを総合的に検討し、監視療法を選択する場合もあります。局所進行がんでは放射線治療や手術療法にホルモン療法を組み合わせ、転移を有する前立腺がんでは、ホルモン療法、アンドロゲン受容体経路阻害薬、化学療法などを病状に応じて行います。
当院では、2025年5月から国産手術支援ロボットhinotori™を用いたロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)を開始し、限局性前立腺がんに対する根治手術として積極的に行っています。放射線治療については、放射線治療部門と連携して強度変調放射線治療(IMRT)などを行っています。
ロボット支援手術
当院では、国産手術支援ロボット「hinotori™ サージカルロボットシステム」を導入し、泌尿器科領域のロボット支援手術を積極的に行っています。2025年5月から前立腺がんに対するロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)を、2025年12月から腎がんに対するロボット支援腹腔鏡下根治的腎摘除術を開始しました。
ロボット支援手術では、術者がサージョンコックピットから高精細な3D画像を観察し、手術器具を装着したロボットアームを操作します。hinotori™のオペレーションアームは8軸構造で、人の腕のようになめらかに動くよう設計されています。手ぶれの影響を抑えた繊細な操作と、狭い術野での精密な剥離・切開・縫合を支援します。
腹部に数か所の小さな創を設けて行うため、従来の開腹手術と比較して、出血量や術後疼痛の軽減、早期離床・早期回復が期待されます。一方で、すべての患者さんがロボット支援手術の対象となるわけではありません。がんの進行度、腫瘍の位置や大きさ、既往手術、併存疾患などを専門医が評価し、開腹手術、腹腔鏡手術、放射線治療、薬物療法なども含めて適切な治療法を提案します。


ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)
ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)は、前立腺と精嚢を摘出し、膀胱と尿道を再吻合する根治手術です。術者は高精細な3D拡大画像のもとでロボットアームを操作し、前立腺周囲の血管、尿道括約筋、神経血管束などの微細な解剖を確認しながら手術を行います。
従来の開腹手術と比較して創が小さく、出血量や術後疼痛の軽減、術後の早期回復が期待できます。また、がんの根治性を確保することを最優先としながら、症例に応じて尿禁制の早期回復や性機能温存に配慮した手術操作を行います。神経温存の可否は、がんの局在や進行度、治療前の機能、患者さんの希望などを踏まえて判断します。
手術には、尿失禁、勃起機能障害、出血、感染、吻合部狭窄、尿漏、血栓塞栓症などの合併症が生じる可能性があります。手術の適応、期待される効果、合併症およびほかの治療選択肢について、術前に詳しく説明します。
腎がんに対するロボット支援手術
当院では、2025年12月から腎がんに対するロボット支援腹腔鏡下根治的腎摘除術を行っています。根治的腎摘除術は、がんのある腎臓を腎周囲脂肪組織とともに摘出する手術で、腫瘍の大きさ、位置、進行度、対側腎の機能および患者さんの全身状態などを評価して適応を判断します。
ロボット支援手術では、高精細な3D拡大画像と関節機能を持つ手術器具を用いて、腎血管や周囲臓器を確認しながら剥離・切離操作を行います。腹部に数か所の小さな創を設けて行うため、従来の開腹手術と比較して出血量や術後疼痛の軽減、早期回復が期待されます。腫瘍の進行度や周囲臓器との関係などによっては、通常の腹腔鏡手術または開腹手術が適切な場合があります。
(2)排尿障害
排尿ケアチームによる支援
当院では、泌尿器科医と看護師を中心に排尿ケアチームを組織し、排尿に関する問題を抱える患者さんを入院・外来の両方で支援しています。対象は泌尿器科の患者さんに限らず、他の診療科に入院中の患者さんについても、主治医や病棟スタッフからの依頼を受けて排尿状態を評価し、適切な排尿管理を提案しています。
排尿状態、残尿量、排尿日誌、服薬状況、日常生活動作、認知機能、基礎疾患などを総合的に評価し、尿道カテーテルの早期抜去と適正使用、間欠自己導尿の導入・手技指導、排尿誘導や排尿自立に向けたケアを行います。必要に応じて泌尿器科での精査や治療につなげ、尿路感染、尿閉、排尿関連合併症の予防を目指します。
退院後も継続した排尿管理が必要な場合には、外来、地域の医療機関、訪問看護、介護スタッフなどと情報を共有し、患者さんの生活環境に応じた切れ目のない支援に取り組んでいます。
(3)接触式レーザー前立腺蒸散術(CVP)
薬物療法で十分な改善が得られない前立腺肥大症、尿閉を繰り返す症例、膀胱結石・反復性尿路感染・腎機能障害などを合併する症例では、手術療法を検討します。当院では、2020年10月から接触式レーザー前立腺蒸散術(CVP:Contact laser Vaporization of the Prostate)を導入し、積極的に行っています。
CVPは、尿道から内視鏡を挿入し、レーザーファイバーを肥大した前立腺組織に接触させて照射することで、組織を気化・蒸散させ、閉塞した前立腺部尿道を内側から拡大する手術です。組織の蒸散と同時に表面を凝固しながら手術を進めるため、従来の経尿道的前立腺切除術(TUR-P)と比較して術中・術後の出血を抑えやすいことが特徴です。
出血リスクの低減が期待できることから、高齢者、心血管疾患を有する患者さん、抗血小板薬・抗凝固薬を服用している患者さんに対しても有用な選択肢となります。ただし、抗血栓薬を継続できるかどうかは、血栓症と出血のリスクを評価し、処方医とも相談したうえで個別に判断します。
細径の内視鏡を用いるため尿道への負担が比較的小さく、術後の尿道カテーテル留置期間や入院期間の短縮、早期回復が期待できます。一方、術後早期には血尿、排尿時痛、頻尿、尿意切迫感、一時的な排尿困難などが生じることがあります。また、前立腺組織を蒸散する術式であるため、通常は病理検査に提出する組織が得られません。手術前にはPSA測定や画像検査などを行い、前立腺がんの可能性を適切に評価します。
前立腺の大きさ、形態、併存疾患、抗血栓薬の使用状況、前立腺がんの可能性などを総合的に検討し、CVP、TUR-P、そのほかの治療法から患者さんに適した方法を提案します。

(4)尿路結石
尿路結石(腎結石、尿管結石、膀胱結石)の診断と治療を行っています。結石の大きさ、位置、個数、硬さ、尿路の形態、感染の有無、腎機能などを評価し、自然排石を促す保存的治療、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、内視鏡手術(TUL)の中から適切な治療法を選択します。
当院では、自然排石が困難な腎・尿管結石に対して、経尿道的尿路結石砕石術(TUL)を積極的に行っています。TULは、尿道から膀胱、尿管へ内視鏡を挿入し、レーザーで結石を破砕して摘出する、体表に手術創を必要としない低侵襲治療です。硬性尿管鏡と軟性尿管鏡を結石の位置に応じて使い分け、尿管結石だけでなく腎結石に対する軟性鏡下TUL(f-TUL/RIRS)にも対応しています。
大きな腎・尿管結石や複雑な腎結石に対しては、結石の大きさ、分布、腎盂・腎杯の形態、感染の有無などを評価し、FANSを用いた経尿道的治療またはECIRSを適応に応じて行っています。
FANS(Flexible and Navigable Suction ureteral access sheath:先端可動型吸引式尿管アクセスシース)は、軟性尿管鏡とともに腎盂・腎杯内へ誘導できる吸引機能付きアクセスシースです。レーザーで砕石した結石片や結石粉を灌流液とともに吸引・排出することで、術野を確保しながら効率的な結石除去を目指します。経尿道的なアプローチのみで治療できることが利点です。
ECIRS(Endoscopic Combined Intrarenal Surgery:経皮・経尿道同時内視鏡手術)は、背中から腎臓へ挿入する腎盂鏡による経皮的アプローチと、尿道・尿管から挿入する軟性尿管鏡による経尿道的アプローチを同時に組み合わせる手術です。サンゴ状結石、多発結石、複数の腎杯にまたがる大きな腎結石などに対し、異なる方向から結石を確認・破砕・回収できるため、効率的な結石除去を目指すことができます。
FANSとECIRSの選択は、結石体積、結石の分布、腎杯形態、尿管の状態、感染リスク、腎機能、抗血栓薬の使用状況などを総合的に判断して決定します。結石の状態によっては、複数回に分けた治療やほかの術式を検討する場合があります。ESWLは原則として外来通院で施行しています(火・木曜日)。


治療実績
| 腎臓、副腎の手術 | 2022年度 | 2023年度 | 20024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|---|
| 腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術 | 9 | 13 | 8 | 10 |
| ロボット支援腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術(RARN) | 0 | 0 | 0 | 1 |
| 腹腔鏡下副腎摘出術 | 0 | 0 | 0 | 1 |
| ロボット支援腹腔鏡下副腎摘出術(RAPP) | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 膀胱、尿管の手術 | 2022年度 | 2023年度 | 20024年度 | 2025年度 |
| 腹腔鏡下膀胱全摘術+回腸導管造設術 | 4 | 0 | 1 | 3 |
| 膀胱悪性腫瘍手術(部分切除) | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 経尿道的膀胱悪性腫瘍手術(TUR-Bt) | 62 | 75 | 69 | 69 |
| 前立腺の手術 | 2022年度 | 2023年度 | 20024年度 | 2025年度 |
| 腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(LRP) | 20 | 25 | 18 | 3 |
| ロボット支援腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(RARP) | 0 | 0 | 0 | 42 |
| 経尿道的前立腺切除術(TUR-P) | 1 | 2 | 2 | 3 |
| 接触式レーザー前立腺蒸散術(CVP) | 15 | 22 | 27 | 36 |
| 結石の手術 | 2022年度 | 2023年度 | 20024年度 | 2025年度 |
| 体外衝撃波腎尿管結石破砕術 | 11 | 10 | 15 | 20 |
| 経尿道的尿管結石除去術(TUL) | 35 | 41 | 48 | 52 |
| 経尿道的膀胱結石摘出術 | 6 | 9 | 4 | 4 |
スタッフ紹介
| 診療科 | 泌尿器科 |
|---|---|
| 役職 | 副院長 (兼)泌尿器科主任医長 |
| 卒業年 | 昭和63年 |
| 専門分野 | 泌尿器一般 腹腔鏡手術 |
| 資格・認定医 | 広島大学医学部臨床教授 医学博士 日本泌尿器科学会専門医・指導医 日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡学会腹腔鏡技術認定医 日本内視鏡外科学会技術認定医(泌尿器) 卒後臨床研修指導医養成講習修了者 がん診療に関わる医師に対する緩和ケア研修会修了 |
| 略歴 | 広島大学病院 JA尾道総合病院 広島大学病院 広島大学原爆放射線医学科研究所 市立三次中央病院 JA広島総合病院 |
| コメント | 「威厳より笑顔」をモットーに地域の皆様に安心して治療を受けていただけるよう努力してまいります。 |

| 診療科 | 泌尿器科 |
|---|---|
| 役職 | 泌尿器科医長 |
| 卒業年 | 平成15年 |
| 専門分野 | 泌尿器科 |
| 資格・認定医 | 医学博士 日本泌尿器科学会専門医・指導医 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会腹腔鏡技術認定医 日本内視鏡外科学会技術認定医 泌尿器ロボット支援手術サーティフィケート 泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医(前立腺・膀胱・副腎・腎領域) がん治療認定医・指導医 卒後臨床研修指導医養成講習修了者 がん緩和診療に関わる医師に対する緩和ケア研修会修了 |
| 略歴 | 広島大学 広島西医療センター たかの橋中央病院 呉医療センター・中国がんセンター 中津第一病院 県立広島病院 |
| コメント | 泌尿器悪性腫瘍や泌尿器科良性疾患を中心に泌尿器科疾患を幅広く診療し信頼される医療を提供します。 |

| 診療科 | 泌尿器科 |
|---|---|
| 卒業年 | 令和3年 |
| 専門分野 | 泌尿器悪性腫瘍、泌尿器科一般 |
| 資格・認定医 | Da Vinci Console Surgeon認定医 |
| 略歴 | 令和3年4月 広島大学病院 初期研修 令和4年4月 呉共済病院 初期研修 令和5年4月~令和7年3月 安佐市民病院 泌尿器科 令和7年4月~令和8年3月 広島大学病院 泌尿器科 |
| コメント | 備北・三次地区の医療に貢献できるように頑張ります。 |
