助産師 田房里奈子

生まれ育った三次市に助産師として出産から退院後をも見据えた関わりを通じて恩返ししたい

私はここ三次市で生まれ育ちました。高校生のときに助産師になりたいと思い看護大学への進学を決めました。大学は県外でしたが、就職は必ず三次市で、と思っていました。そして三次市で出産される方の多くは三次中央病院なので「この地域でお母さんやご家族が安心して出産・育児ができる頼れる病院の一端を担いたい」との思いで地元に戻ってきました。働き出して5年が経ち、出産から退院後をも見据えた関わりもしていきたいという思いで現在仕事に取り組んでいます。

「おめでたい」ばかりでない現実と向き合い、心と体も休んでもらって退院できるよう心掛けたい

土地柄もあり、こちらの病院では妊娠中に里帰りしてこちらで出産して、そして帰っていくという人が多いです。病棟看護師としては出産前日や当日に出会って、無事に出産されると自然分娩で5日、帝王切開で7日後には退院されていきます。この短い間でもお母さんは体も心も大きな変化があります。産婦人科病棟というと、赤ちゃんが誕生して幸せいっぱいで退院されていくというイメージがありますが、すべてがそうではないのが現実です。初産の場合は授乳も初めてですからほとんどのお母さんは寝不足になります。「授乳指導」として必要なことをお伝えしますが、お母さんの体調もさまざまであり、うまく伝えきれないこともあります。赤ちゃんは元気に生まれても、お母さんにとってはこれからの生活や育てていく環境、経済的な問題などで不安を抱えておられる場合もあります。にこやかに見える姿と心は違うこともあります。5日間でだんだん落ち着くお母さんもいれば退院に向けて不安が募るお母さんもいます。ですから、私たちは出産後にお母さんにアンケートを書いてもらって、今どんなケアやサポートが必要なのかを聞き出し、心と体も休んでもらってから退院できるように心がけています。

家族の絆を大切に考え、「お母さん・お父さんが安心して子育てできる社会」に役立ちたい

就職してからコロナ禍もあり、私は家族による立ち合い出産を経験したことがありませんでした。しかし最近になり立ち合いも3年ぶりに再開しました。これまで助産師としてお母さんの不安や心細さをできるだけ取り除けるようにいっしょに出産を乗り越えてきたつもりでしたが、やはり、お父さん(家族)の立ち合いがあると安心感なども全然違うのだと感じました。そうして夫婦で一緒に出産をがんばったことで家族の絆が深まり、退院後の子育てにも良い影響が出るということも実感としてわかりました。病棟で4年間出産を見てきたことで感じるのは「継続した関わり」をしていきたいということ。妊娠期から出産を経て褥婦となるなかで女性は心身ともにさまざまな変化を乗り越えていかねばなりません。当院には現在はまだありませんが、市役所の保健師と連携をとりながら「院内助産」のような機能を持たせたり、出産後のお母さんや赤ちゃんたちが集まるところに助産師が出向けば果たせる役割もあるようにも思います。コロナ禍も治まってこれから病院の動きもまた活発になっていくと思うので、行動の場を広げていければと思います。